農業用ドローンとは?導入のメリット・デメリット・活用事例を解説
2025.1.10
農業が抱えるさまざまな課題を解決できるツールとして、ドローンが近年注目されています。実際に、ドローンを導入した農家の多くで生産性が向上し、効果が表れているのです。この記事では、農業用ドローンのメリット・デメリットや実際の導入事例をご紹介します。農業用ドローンの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
スマート農業を実現する農業用ドローンとは?
農業用ドローンとは、ドローン(無人航空機)を農業に応用したものです。近年はAIやIoTなどの先端技術を活用した農業である「スマート農業」が推進されており、その一環としてドローンも注目されています。
農業におけるドローンは、主に以下のような目的で利用されています。
- 農薬散布
- 肥料散布
- 播種(種まき)
- 受粉
- 農産物等の運搬
- ほ場センシング
- 鳥獣被害対策
出典:農林水産省「農業用ドローン」出典:農林水産省「令和6年度 農業分野におけるドローンの活用状況」
農業用ドローンにはタンクやノズルが搭載されており、作物の上空を飛行して農薬や肥料を散布します。「ほ場センシング」とは、ドローンに搭載されたカメラで農作物を撮影し、生育状況をリアルタイムで把握することです。
こうした作業をドローンが担うことで、現代の農業が抱える高齢化や人手不足などの課題解決に役立つとして、注目されています。
農業にドローンを導入するメリット・デメリット
農業にドローンを導入するとさまざまなメリット・デメリットがあります。1つずつ見ていきましょう。
農業用ドローンのメリットには、以下のようなものがあります。
メリット1:手間と作業時間が軽減される
農薬や肥料を散布する作業は、人力で行うと大きな手間がかかり、特に高齢者にとっては過酷な作業です。しかしドローンを使用すれば、人間は地上からドローンを操作するだけでよく、重労働を行わずに済みます。
また、ドローンによって作業時間も大幅に短縮可能です。ドローンで散布する場合の作業時間は、人力で行う場合の約5分の1といわれています。また、ドローンの飛行ルートを設定しておけば夜間に散布を行うこともでき、さらに時間を有効活用することが可能です。
メリット2:人が入りにくい場所での作業が簡単になる
農業用ドローンを利用すれば、人が入りにくい場所での作業も可能になります。例えば、重機が入れないほどの狭い場所や傾斜が急な場所でも、ドローンなら上空から作業できます。
また、ドローンの導入によって、農業従事者の安全性も高まります。例えば、農薬散布をドローンに任せることで、作業者が農薬に触れる時間が減るため、農薬の影響を最小限に抑えることが可能です。
メリット3:農薬散布やほ場間のばらつきを抑えられる
農業用ドローンにはカメラが搭載されており、作物の生育状況をリアルタイムに把握することができます。これにより、農薬・肥料を散布する適切なタイミングが分かるのです。
また、人間が農薬や肥料を散布する場合、どうしてもムラが出てしまいます。ドローンなら飛行ルートや散布範囲がコンピュータで制御されているため、ムラを抑えて散布できるのです。
また、カメラによってほ場間の作物のばらつきを把握することができます。このばらつきを解消することで、収穫量が増えたというデータもあります。
農業用ドローンのデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。ドローンを導入したい場合は、これらのデメリットもしっかり把握しておきましょう。
デメリット1:導入・維持にコストがかかる
一般的なドローンには1万円以下の手軽な機種もありますが、農業用ドローンは比較的高価です。また、ドローンは精密機器のため、購入した後も定期的なメンテナンスが必要となります。農業用ドローンの価格の目安は100万~300万円、維持コストは年間20万円程度といわれています。
また、農業にドローンを利用するなら、万が一の事故や故障の場合を考えて保険加入が必須といえます。保険料も年間十万円単位でかかるため、注意しましょう。
デメリット2:周辺への配慮が必要
ドローンを使って農薬を散布する場合、「ドリフト」のリスクがあることに注意が必要です。ドリフトとは、対象となる作物以外のものに農薬が飛散してしまうことです。ドローンによる農薬散布では、通行人や近隣宅の洗濯物、自動車などに農薬がドリフトしてしまう可能性があります。
その対策として、通勤・通学時間帯を避け夜間に散布するなど、なるべく迷惑がかからない時間に飛行させるのがおすすめです。また、ドローンを飛ばす目的や時間帯を事前に周辺住民へ周知しましょう。
デメリット3:使用可能な薬剤が限られる
農業用ドローンでは散布できる農薬は農林水産省によって指定されています。それ以外の薬剤をドローンで散布することは法律で禁止されているため、注意しましょう。
出典:農林水産省「ドローンで使用可能な農薬」
指定されている農薬のうち、稲作用のものは比較的豊富ですが、露地野菜や果物向けの農薬はまだ多くありません。どの農薬をドローンで散布できるか、以下のサイトから検索して確認しておきましょう。
出典:農林水産省「農薬登録情報提供システム」
農業分野でのドローン活用事例
ここでは、実際に農業分野でドローンを活用した事例を2つ見ていきましょう。
JAレーク大津(滋賀県大津市)
滋賀県大津市では2018年度から農業用ドローンを導入しており、水稲・麦・大豆・玉ねぎの農薬散布、大豆の肥料散布、播種などに活用しています。
その結果、農薬散布作業が省人化されたことから、玉ねぎの栽培面積が1haから1.5haへ拡大されました。また、人がほ場に入らずに播種できるため、大豆を傷つけずに収穫でき、収穫量が増えたのです。
出典:農林水産省「農業分野におけるドローン活用の事例」
海地方スマート農業推進協議会 (和歌山県和歌山市)
和歌山県和歌山市などの3市町では、2024年3月現在で4台のドローンを導入し、水稲の農薬散布に活用しています。
その結果、以下のように作業時間が短縮され、省人化が実現しました。
- 1haを4人で1日→ 2haを2人で半日
- 50aを4人で4時間→同面積を2人で20分
出典:農林水産省「水田作 農業用ドローンの導入による水稲の省力的防除」
ドローンで農業を大幅に効率化できる!
農薬・肥料の散布や作物の監視に役立つ農業用ドローン。導入することで農作業が効率化され、農業従事者の負担も大きく軽減されます。
一方で、初期費用や維持コストがかかること、散布できる農薬が限られることなど、注意点も存在します。メリットとデメリットを検討した上で、農業用ドローンの導入を決定しましょう。
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